自己免疫性脳炎

臨床情報

自己免疫性脳炎の患者は、神経細胞表面抗原に対する自己抗体を有しています。抗体は、グルタミン酸受容体（NMDA型またはAMPA型）、GABAB受容体、DPPX、および電位依存性カリウムチャネル（VGKC）やその関連タンパク質（LGI1、CASPR2、TAG-1/コンタクチン-2）に対するものです。
これらの抗原はシナプス伝達に直接的または間接的に関与しており、自己免疫反応によって誘発される疾患は、けいれんや神経精神症状を呈します。その結果として生じる代表的な病態には、自己免疫性辺縁系脳炎、ニューロミオトニア、およびモルバン症候群の特殊型などが含まれます。
これらの重篤で潜在的に致死的な症候群は、非傍腫瘍性または傍腫瘍性の病因を持つことがあります。腫瘍の合併頻度は抗体の種類によって異なり、10〜70％の範囲に及びます。これらの抗体は病態形成において因果的な役割を担っていると考えられています。
適切な治療（免疫療法や腫瘍切除）により、ほとんどの患者で顕著な改善がみられるため、早期の評価と対応が予後改善に重要です。

検査

自己免疫性脳炎の評価は、一般的に以下の要素の組み合わせに基づきます：
•    特徴的な臨床像
•    必要に応じた脳MRI、EEG、髄液（CSF）分析などの補助的検査
•    血清およびCSF中の自己抗体の検出
血清学的検出には、単一特異的な組換え抗原アッセイが標準的に用いられ、
従来の免疫組織化学的手法と組み合わせることで補完的な評価が可能です。
判別の際には、以下の疾患・状態を除外する必要があります：
•    感染性脳炎（特にHSV）
•    他の自己免疫性脳炎（例：Hu、Ma2、CV2、アンフィフィシン抗体関連辺縁系脳炎）
•    中枢神経系および末梢神経系の類似疾患
また、非定型脳炎との判別も考慮すべきであり、オーバーラップ症候群や異なる脳炎型の併存が生じる可能性にも留意する必要があります。
血清学的に陽性結果が得られた場合には、包括的な腫瘍検索を行うことが推奨されます。